2011年07月17日
バングラデシュ紀行③ 「経済編」
村松寛一塾生(三敬鋼機)より、バングラデシュレポートが届きました。今回が最終便で「経済」についてレポートしていただきました。
バングラデシュレポート最終は経済の話です。
日本の置かれている地理的状況に対して良く言われる言葉
「日本は幸か不幸か中国が隣にある国」
と言う言葉です。
私自身、学生時代に中国の大学に1年通っていた縁もあり注目してまいりましたが、2000年代の中国の発展は目覚ましいモノがあります。
大学への通学路、舗装もされていなくのんびりと牛車が闊歩していた道路が3年後には片側3車線、中央にバス専用道路が出来上がっており、とてつもない経済の流れを感じました(北京の再重要発展地域だと言う事はありますが・・・)
2011年を半分すぎ、いまだに成長率が2ケタに近い中国。
投機目的のマンション購入など報道され、日本のバブル期の喧騒に似た雰囲気はありますが、中国当局は「日本のバブルの終焉」も経験しています。
日本と違い政府ごり押しがまかり通る中国は、当局がこの状況に指をくわえて見ているだけでしょうか?
そろそろ力技で乗り切るのかもしれません。
では「次の中国」を見るとどうでしょうか?
最初にさけばれるのは「BRICs」諸国。オリンピック開催も決まったブラジルであり、ロシア、インド、そして南アフリカも名前が挙がっています。
さらにその次を見ますと、ゴールドマンサックス証券が2007年の経済予測レポートに挙げた「ネクスト11」があります。
韓国、インドネシアなどの順調な経済成長を見せる各国の中にバングラデシュの名前も見られます。
ネクスト11諸国と比べると、正直並べる事がおこがましいと思われる後発発展途上国バングラデシュですが、それなりの可能性は見えます。
現在のバングラデシュの経済成長率は6.5%を少し超えた所。
まだまだ急成長とは言わないまでも着実な成長が見られます。
ではなぜ私がバングラデシュに注目しているか、という部分ですが
①人口
②経済圏
という2点にあります。
バングラデシュの人口は2008年度調べで1億5千万人、日本を超え世界人口ランキングの7位につけています。
さらに人口密度はマカオやモルジブなどの極小地域を除くと、圧倒的に1位の座に躍り出るほどの人口過多国家です。
残念ながら同様に失業率もかなり高く、多くの人が仕事にあぶれている状況ですが、逆に言うと多くの人的資源が眠っているという事になります。
さらに経済圏の優位さ。
バングラデシュは言わずもがな、インド経済圏に含まれていると言えるでしょう。
中国が人口統制をしき、これからの人口の伸びがとどまる中、ご存知のようにインドはポスト中国の急先鋒と言われています。
忘れてはいけないですが中国と違い、インドはその周辺国も爆発的な人口過多国だと言う事です。
バングラデシュを始め、パキスタン、スリランカなどです。
パキスタンとインドの関係はカシミール地方の領有をめぐり今なお、きな臭い情勢ですが、バングラデシュやスリランカ、ネパールなどは比較的良好な関係を保ち、その衛星国はインドに対しそれなりのリスペクトの念が感じられます。
このインドを中心とする南アジア連合はこれからの経済に大きな影響を与えるでしょう。
さらにイギリス統治時代の影響か、この地域ではいまだに英語が大きな位置を占めます。
ズームイン朝「ワンポイント英会話」で有名なウィッキーさんはスリランカの方ですね。
今年当初のバングラデシュ首相シェイク・ハシナ女史が訪日した際の通訳の方、あの方は英語担当通訳者です。
という事はハシナ首相は母国語のベンガル語ではなく正式会談を含めほぼ全般を英語での会話をしていたという事です。
さらにこちらバングラデシュでの正式文書は決してベンガル語ではありません。
アパートの契約書ですら英語で表わされます。
これはインドと同じく、文化の優位性として明らかに恵まれている環境なのかもしれません。
ここからは中小企業に当てはまる優位性かもしれませんが、バングラデシュの日本との時差は3時間。
中小企業が商売相手として24時間体制を持たなくてすむ、立地条件。
さらに何よりもここが大事なのですが「未だマイナーな国」という事なのかもしれません。
同条件の発展途上国にはインドネシアやベトナムなどがありますが、その2カ国はすでに日本経済ではある程度の注目を持って進出済みの企業も多いです。
しかしバングラデシュは未だマイナー感がぬぐえない、という国家です。
観光資源に乏しいがため、ニュースなどで挙げられる機会がすくなく、全世界的にマイナーな国家と言えるでしょう。
イコール、ライバル社の進出も少ないという事です。
この「ライバルが少ない」という条件は、中小企業が先行者利益を得るのには最も適していると思われます。
ここ数年、ユニクロやYKKなど服飾関係の企業は中国からバングラデシュにシフトしてきました。
歴史上どの国でも「服飾業」は経済成長の第一歩と言われています。
インドネシア、ベトナムの成長も、「まずは服飾から」はじまりました。
まだまだマイナーではあるが、成長の息吹はもう吹き始めているという事です。
以上を踏まえると、バングラデシュという国はかなりの可能性を秘めていると言わずにいられません。
しかしながらやはり懸念材料はかなりあります。
もっとも大きな要因が「政治状況」です。
現在政権についているのがアワミ連盟、最大野党がBNPという党です。
5年に1度行われる選挙で、この2党ははげしく争い、政権交代と共に今までの慣習が根こそぎひっくり返される事も多々あります。
「国の運営に継続性がない」という事です。
これはロングスパンの経営計画が立てにくく、かなりの障壁になります。
洪水で多くの国民が亡くなるなか、継続性のない国の運営に恨めしい声も多数聞かれます。
さらに選挙間近になると野党を中心に注目度を上げるための「ホルタル(ゼネスト)」が頻繁に行われます。
これは「横断幕を持って行進する類のデモ」とは様相が違い、デモ賛同者による投石、放火など過激な行動も多く、その都度市内のバスなどは運休、運送のマヒ状況がおき、商店も「ホルタル情報」が出ると店を閉じる所もいくつか出てきます。
いくらバングラデシュ政府が「ぜひバングラデシュに投資して下さい」と言っておいても、このような政治主導のゼネストを行うのでは、発言に大きな矛盾を感じる以外ありません。
そして電力不足。
これはバングラデシュだけでなく、インドを含めた周辺諸国に言える事ですが旺盛な電力需要に供給が追い付いて行かず、1日のうちに何度も頻繁な計画停電が行われ、それを逃れたい企業や人は個々で「発電機」を用意してそれに対応しなければいけません。
家庭での発電機ならたかが知れていますが、工場規模になってくるとこの発電機の準備もかなりの負担になります。
ここ最近ようやくロシア技術を用いた原子力開発が第一歩すすんだ所でしたが、先日の日本の「原発事故」はこの国の国民に対しても原発アレルギーを生み始めています。
この心情はなかなか改善しない状況でしょう。
さて、ここまでいくつかバングラデシュの状況についてご報告させていただきましたが、結局はどの国にも「明るさ」とは「暗さ」は持ち合わせているものです。
そして日本経済の行く末になかなか光明を見いだせない中、我々中小企業もだんだんと世界舞台に立たなくてはならない日々が近づいてきている現実もあります。
その中で私は、バングラデシュという国は選択肢の一つとして頭の片隅に置いて損はない国であると考えています。
弊社三敬鋼機も今後「中小企業のバングラデシュ進出サポート」を手掛けていこうと考えています。
ぜひまた疑問等があればお伺い下さい。
8月中旬にかけて一度帰国する予定です。
また皆さまと共に吉田塾で研鑽を高めたいと思いますので、宜しくお願い致します。
2011年7月
ダッカオフィスにて
三敬鋼機株式会社
村松寛一
バングラデシュレポート最終は経済の話です。
日本の置かれている地理的状況に対して良く言われる言葉
「日本は幸か不幸か中国が隣にある国」
と言う言葉です。
私自身、学生時代に中国の大学に1年通っていた縁もあり注目してまいりましたが、2000年代の中国の発展は目覚ましいモノがあります。
大学への通学路、舗装もされていなくのんびりと牛車が闊歩していた道路が3年後には片側3車線、中央にバス専用道路が出来上がっており、とてつもない経済の流れを感じました(北京の再重要発展地域だと言う事はありますが・・・)
2011年を半分すぎ、いまだに成長率が2ケタに近い中国。
投機目的のマンション購入など報道され、日本のバブル期の喧騒に似た雰囲気はありますが、中国当局は「日本のバブルの終焉」も経験しています。
日本と違い政府ごり押しがまかり通る中国は、当局がこの状況に指をくわえて見ているだけでしょうか?
そろそろ力技で乗り切るのかもしれません。
では「次の中国」を見るとどうでしょうか?
最初にさけばれるのは「BRICs」諸国。オリンピック開催も決まったブラジルであり、ロシア、インド、そして南アフリカも名前が挙がっています。
さらにその次を見ますと、ゴールドマンサックス証券が2007年の経済予測レポートに挙げた「ネクスト11」があります。
韓国、インドネシアなどの順調な経済成長を見せる各国の中にバングラデシュの名前も見られます。
ネクスト11諸国と比べると、正直並べる事がおこがましいと思われる後発発展途上国バングラデシュですが、それなりの可能性は見えます。
現在のバングラデシュの経済成長率は6.5%を少し超えた所。
まだまだ急成長とは言わないまでも着実な成長が見られます。
ではなぜ私がバングラデシュに注目しているか、という部分ですが
①人口
②経済圏
という2点にあります。
バングラデシュの人口は2008年度調べで1億5千万人、日本を超え世界人口ランキングの7位につけています。
さらに人口密度はマカオやモルジブなどの極小地域を除くと、圧倒的に1位の座に躍り出るほどの人口過多国家です。
残念ながら同様に失業率もかなり高く、多くの人が仕事にあぶれている状況ですが、逆に言うと多くの人的資源が眠っているという事になります。
さらに経済圏の優位さ。
バングラデシュは言わずもがな、インド経済圏に含まれていると言えるでしょう。
中国が人口統制をしき、これからの人口の伸びがとどまる中、ご存知のようにインドはポスト中国の急先鋒と言われています。
忘れてはいけないですが中国と違い、インドはその周辺国も爆発的な人口過多国だと言う事です。
バングラデシュを始め、パキスタン、スリランカなどです。
パキスタンとインドの関係はカシミール地方の領有をめぐり今なお、きな臭い情勢ですが、バングラデシュやスリランカ、ネパールなどは比較的良好な関係を保ち、その衛星国はインドに対しそれなりのリスペクトの念が感じられます。
このインドを中心とする南アジア連合はこれからの経済に大きな影響を与えるでしょう。
さらにイギリス統治時代の影響か、この地域ではいまだに英語が大きな位置を占めます。
ズームイン朝「ワンポイント英会話」で有名なウィッキーさんはスリランカの方ですね。
今年当初のバングラデシュ首相シェイク・ハシナ女史が訪日した際の通訳の方、あの方は英語担当通訳者です。
という事はハシナ首相は母国語のベンガル語ではなく正式会談を含めほぼ全般を英語での会話をしていたという事です。
さらにこちらバングラデシュでの正式文書は決してベンガル語ではありません。
アパートの契約書ですら英語で表わされます。
これはインドと同じく、文化の優位性として明らかに恵まれている環境なのかもしれません。
ここからは中小企業に当てはまる優位性かもしれませんが、バングラデシュの日本との時差は3時間。
中小企業が商売相手として24時間体制を持たなくてすむ、立地条件。
さらに何よりもここが大事なのですが「未だマイナーな国」という事なのかもしれません。
同条件の発展途上国にはインドネシアやベトナムなどがありますが、その2カ国はすでに日本経済ではある程度の注目を持って進出済みの企業も多いです。
しかしバングラデシュは未だマイナー感がぬぐえない、という国家です。
観光資源に乏しいがため、ニュースなどで挙げられる機会がすくなく、全世界的にマイナーな国家と言えるでしょう。
イコール、ライバル社の進出も少ないという事です。
この「ライバルが少ない」という条件は、中小企業が先行者利益を得るのには最も適していると思われます。
ここ数年、ユニクロやYKKなど服飾関係の企業は中国からバングラデシュにシフトしてきました。
歴史上どの国でも「服飾業」は経済成長の第一歩と言われています。
インドネシア、ベトナムの成長も、「まずは服飾から」はじまりました。
まだまだマイナーではあるが、成長の息吹はもう吹き始めているという事です。
以上を踏まえると、バングラデシュという国はかなりの可能性を秘めていると言わずにいられません。
しかしながらやはり懸念材料はかなりあります。
もっとも大きな要因が「政治状況」です。
現在政権についているのがアワミ連盟、最大野党がBNPという党です。
5年に1度行われる選挙で、この2党ははげしく争い、政権交代と共に今までの慣習が根こそぎひっくり返される事も多々あります。
「国の運営に継続性がない」という事です。
これはロングスパンの経営計画が立てにくく、かなりの障壁になります。
洪水で多くの国民が亡くなるなか、継続性のない国の運営に恨めしい声も多数聞かれます。
さらに選挙間近になると野党を中心に注目度を上げるための「ホルタル(ゼネスト)」が頻繁に行われます。
これは「横断幕を持って行進する類のデモ」とは様相が違い、デモ賛同者による投石、放火など過激な行動も多く、その都度市内のバスなどは運休、運送のマヒ状況がおき、商店も「ホルタル情報」が出ると店を閉じる所もいくつか出てきます。
いくらバングラデシュ政府が「ぜひバングラデシュに投資して下さい」と言っておいても、このような政治主導のゼネストを行うのでは、発言に大きな矛盾を感じる以外ありません。
そして電力不足。
これはバングラデシュだけでなく、インドを含めた周辺諸国に言える事ですが旺盛な電力需要に供給が追い付いて行かず、1日のうちに何度も頻繁な計画停電が行われ、それを逃れたい企業や人は個々で「発電機」を用意してそれに対応しなければいけません。
家庭での発電機ならたかが知れていますが、工場規模になってくるとこの発電機の準備もかなりの負担になります。
ここ最近ようやくロシア技術を用いた原子力開発が第一歩すすんだ所でしたが、先日の日本の「原発事故」はこの国の国民に対しても原発アレルギーを生み始めています。
この心情はなかなか改善しない状況でしょう。
さて、ここまでいくつかバングラデシュの状況についてご報告させていただきましたが、結局はどの国にも「明るさ」とは「暗さ」は持ち合わせているものです。
そして日本経済の行く末になかなか光明を見いだせない中、我々中小企業もだんだんと世界舞台に立たなくてはならない日々が近づいてきている現実もあります。
その中で私は、バングラデシュという国は選択肢の一つとして頭の片隅に置いて損はない国であると考えています。
弊社三敬鋼機も今後「中小企業のバングラデシュ進出サポート」を手掛けていこうと考えています。
ぜひまた疑問等があればお伺い下さい。
8月中旬にかけて一度帰国する予定です。
また皆さまと共に吉田塾で研鑽を高めたいと思いますので、宜しくお願い致します。
2011年7月
ダッカオフィスにて
三敬鋼機株式会社
村松寛一